他力本願
概要
他力本願(たりきほんがん)は、日本の仏教、特に浄土宗や浄土真宗における教義であり、阿弥陀仏の力に頼って救済を得ることを指します。自己の修行や努力ではなく、阿弥陀仏の慈悲と願い(本願)によって往生(浄土への転生)することを重視します。
起源
他力本願の概念は、平安時代の僧侶法然(1133-1212)によって提唱されました。法然は、自力の修行だけでは浄土に往生するのが困難であるとし、阿弥陀仏の本願に基づく他力の信仰を説きました。この教えは、その弟子である親鸞(1173-1263)によってさらに発展し、浄土真宗として広まりました。
教義
他力本願の教義は、以下のような要素で構成されています:
- **阿弥陀仏の本願**: 阿弥陀仏がすべての衆生を救済するために立てた48の誓願。その中でも第18願(念仏の願)が特に重要とされます。
- **念仏**: 「南無阿弥陀仏」と唱えることで、阿弥陀仏の本願に応じて救済を得ることができるとされます。
- **信心**: 阿弥陀仏の本願を信じ、その慈悲に身を委ねること。
実践
他力本願の信仰に基づく実践には、以下のようなものがあります:
- **念仏を唱える**: 日常生活の中で「南無阿弥陀仏」と唱えることが奨励されます。
- **阿弥陀仏を信じる**: 阿弥陀仏の慈悲と本願に対する深い信仰を持つこと。
- **浄土への願い**: 死後に阿弥陀仏の浄土に往生することを願う心を持つこと。
現代の他力本願
現代においても、他力本願の教えは多くの人々に支持されています。浄土宗や浄土真宗の信者だけでなく、広く一般の人々にも心の平安を提供する教えとして受け入れられています。
関連する概念
- **自力**: 自分自身の努力や修行によって悟りや救済を得ることを指します。これに対し、他力本願は阿弥陀仏の力に依存することを強調します。
- **浄土**: 阿弥陀仏が住む理想的な仏国土であり、信者が往生を願う場所。
- **法然**: 浄土宗の開祖であり、他力本願の教えを広めた僧侶。
- **親鸞**: 浄土真宗の開祖であり、法然の弟子として他力本願の教えをさらに発展させました。