維摩経

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  1. 維摩経

維摩経(ゆいまぎょう、テンプレート:Lang-sa-shortVimalakīrti Nirdeśa Sūtra、維摩詰所説経)は、大乗仏教の経典の一つ。居士(在家信者)である維摩詰(ゆいまきつ、Vimalakīrti)が諸弟子や菩薩に対しての思想を説く内容を持つ。大乗経典の中でも在家者を主人公とする点が特異であり、不二法門の思想を象徴的に示す。

概要

  • 紀元1〜2世紀頃、インドで編纂されたとされる。
  • 維摩詰という在家信者が病を理由に、多くの弟子・菩薩を自宅に招き、大乗仏教の根本思想を語る。
  • 主題は「出家/在家の区別を超える智慧」と「不二の真理」。
  • 中国では4世紀初頭、支謙訳『維摩詰経』、後に鳩摩羅什による『維摩詰所説経』(406年)が広まり、後者が決定版として東アジア仏教に大きな影響を与えた。

章構成(鳩摩羅什訳)

『維摩詰所説経』は全14品(章)からなる。代表的なものは以下の通り。

  • 仏国品 – 真の仏国土のあり方を説く。
  • 方便品 – 維摩詰が病を方便として用い、衆生を教化する。
  • 弟子品 – 舎利弗、目連ら声聞が維摩詰を見舞おうとするが、彼の智徳に恐れて辞退する。
  • 菩薩品 – 菩薩たちも同様に辞退するが、最終的に文殊菩薩が派遣される。
  • 文殊師利問疾品 – 文殊と維摩詰の問答が展開され、在家・出家を超えた智慧が示される。
  • 不思議品 – 維摩詰が神通を示し、他方世界の菩薩や食事を招来する。
  • 観衆生品 – 菩薩の慈悲と方便の姿を説く。
  • 仏道品 – 不二法門の思想が説かれる。多数の菩薩が「二元を超える真理」を述べた後、維摩詰は沈黙をもって応じ、最高の智慧を示したとされる。

教義的特徴

  • 不二法門 – 煩悩と菩提、生死と涅槃など、あらゆる対立は究極において「不二」であることを示す。
  • 在家信仰の重視 – 在家者である維摩詰が、出家の声聞・菩薩を凌ぐ智慧を示す点は、従来の仏典に見られない特色である。
  • 方便と慈悲 – 維摩詰の病は方便であり、衆生の苦に寄り添う菩薩の姿を象徴する。

中国・日本への伝来

  • 3世紀に支謙訳『維摩詰経』が現れるが、広く流布したのは406年の鳩摩羅什訳『維摩詰所説経』。
  • 日本には6世紀ごろ伝来し、法隆寺に「維摩会」の儀式が行われた記録がある。
  • 奈良・平安時代には、法華経華厳経と並んで三大経典とされ、絵画・文学・演劇に大きな影響を与えた。

文化的影響

  • 維摩居士は日本・中国で「智慧の象徴」として尊崇され、維摩会(ゆいまえ)の法会や絵巻物の題材となった。
  • 『維摩詰会』を主題とする絵画は、在家信仰や大乗思想の広がりを表す美術資料となっている。
  • 維摩の「沈黙の説法」は、後世の禅宗思想にも影響を与えた。

現代研究

  • 学術的には、般若経群と思想的に近く、「空」「不二」を主題とする。
  • 成立地については北インド説、中インド説があり、仏教教団の在家信者の台頭を背景とするとも考えられる。

関連項目

外部リンク