秘すれば花
- 「秘すれば花なり。秘せずは花なるべからず」
- (秘密にして見せないから花となる[価値がある]のだ。秘密にしておかないと花[価値]はなくなる)
- 『風姿花伝』第七・別紙口伝
- 秘密にしていること自体に価値がある
- 世阿弥が言いたいのは、“隠しているものの価値が重要だ”ということではなく、“隠すこと自体が重要だ”ということです。したがって、大事なのは「隠していることすら、相手に気づかれてはいけない」というのです。
秘すれば花
「秘すれば花」は、能楽の大成者である観阿弥が説いた美学の一つであり、「秘すればこそ花なれ」という言葉に端を発します。この言葉は、「何かを隠すことで、そのものの価値や美しさが高まる」という意味を持ちます。観阿弥は、芸術や表現において全てを明らかにせず、観る者や聴く者の想像力を喚起することの重要性を説きました。
概要
観阿弥(1333年 - 1384年)は、能楽の創始者の一人であり、息子の世阿弥と共に能楽を大成しました。「秘すれば花」という概念は、彼の芸術観や美学の核心を成すものであり、能楽だけでなく日本の芸術文化全般に影響を与えました。
意味
「秘すれば花」という表現は、「何かを隠すことでそのものの価値や美しさが増す」という意味です。全てを見せずに隠すことで、見る者の想像力を刺激し、より深い感動を引き出すことができるとされています。
実例
- 能楽において、演者は全ての感情や物語の詳細を直接表現するのではなく、微妙な動きや沈黙、間を利用して観客に感じさせることを重視します。
- 書道や絵画においても、余白や控えめな表現が重視され、その中に込められた意味や感情を観る者に感じさせることが求められます。
影響
観阿弥の「秘すれば花」という美学は、日本の伝統芸術や文化に深く根付いており、現代の芸術やデザイン、さらにはビジネスにおいてもその影響が見られます。控えめな美しさや、全てを見せずに魅力を引き出す手法は、今なお広く活用されています。
関連項目
参考文献
- 観阿弥, 『風姿花伝』, 1380年代