公正世界仮説
公正世界仮説
公正世界仮説(Just World Hypothesis)とは、個人が世界が公正であると信じる傾向を指す心理学的概念である。この仮説によれば、人々は行動や出来事の結果がその人の行動や特性に対応して公正に配分されると信じている。つまり、善行をした人は報われ、悪行をした人は罰せられるというような、因果関係が明確で正当な世界観を持っていると仮定する傾向がある。
背景
公正世界仮説は、アメリカの心理学者メルヴィン・J・リッチャー(Melvin J. Lerner)によって1965年に提唱された。リッチャーは、この仮説が人々が不条理な出来事に直面した際に心の平静を保つのに役立つと考えた。しかし、この仮説が個人の行動や出来事の結果を誤って説明し、被害者責任を負わせる可能性もあることが後に指摘された。
主な特徴
公正世界仮説には以下のような特徴がある。
- **因果関係の信念**: 行動と結果の間に因果関係があると信じる。例えば、成功は努力の結果であり、失敗は怠惰や無能の結果であると考える。
- **被害者責任のバイアス**: 悪い結果や災害が起きた場合、被害者に責任があると考える傾向がある。これにより、他人の不幸を回避しようとする意識的な行動や思考が生じる場合がある。
批判
公正世界仮説は、現実の不公正や偶発的な出来事を説明する際に、個人の自己防衛機制として機能することが指摘されている。しかし、この仮説が不適切な被害者責任を強調し、社会的不平等を正当化する可能性があるという批判もある。
応用
公正世界仮説の理解は、個人の行動や社会の構造に対する洞察を提供する。また、教育や社会的介入の分野で、不公正や差別の是正に向けた取り組みを促進する上でも重要な役割を果たす。