「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)と森田療法の共通点と相違点」の版間の差分
Moutaku3dayo (トーク | 投稿記録) (ページの作成:「== ACTと森田療法の比較 == === 共通点 === どちらも「感情や症状を排除しようとせず、受け入れること」に焦点を当てた心理療法である。 {| class="wikitable" |+ ACTと森田療法の共通点 ! 共通点 !! 説明 |- | 感情や症状を排除しない || ACTでは「アクセプタンス(受け入れ)」、森田療法では「あるがまま」として、不安や苦しみを否定せず受容する。 |- | コ…」) |
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== | == ACTと森田療法の詳細比較と実践例 == | ||
=== 概要 === | |||
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)と森田療法は、いずれも「感情を否定せず、受け入れながら、価値に沿った行動を取る」という点で共通した哲学を持つ心理療法である。しかし、背景や技法には文化的・理論的な違いがある。 | |||
=== 共通点 === | === 共通点 === | ||
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|+ ACTと森田療法の共通点 | |+ ACTと森田療法の共通点 | ||
! 共通点 !! 説明 | ! 共通点 !! 説明 !! 実践例 | ||
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| 感情や症状を排除しない || | | 感情や症状を排除しない || 不安や悲しみを否定せず、「あるもの」として受け入れる姿勢。 || 不安があっても、「このままでいい」として静かに見守る。 | ||
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| コントロール不能なものを手放す || | | コントロール不能なものを手放す || 感情や症状をコントロールしようとすると逆に強まるため、操作しようとしない。 || 「不安をなくそうとしない」=「不安を持ったまま買い物に行く」など。 | ||
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| 行動に焦点を当てる || | | 行動に焦点を当てる || 感情に振り回されず、価値や目的に沿った行動を優先。 || 「怖いけど、人前で話す」など。 | ||
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| | | 価値・目的に生きる || 本人が大切にしている人生の方向性に基づく行動を推奨。 || 「自分は人とつながることを大切にしている」→「孤独でも会話を始める」など。 | ||
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! 観点 !! ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー) !! 森田療法 | ! 観点 !! ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー) !! 森田療法 | ||
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| 理論的背景 || | | 理論的背景 || 第3世代の認知行動療法。関係フレーム理論(RFT)やマインドフルネスの影響。 || 東洋思想(禅・儒教・自然観)と日本的経験主義に基づく。 | ||
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| 治療の枠組み || セッション形式(個別・集団・オンライン)。短期・長期両対応。 || 従来は入院療法、現在は外来・生活療法としての応用が中心。 | |||
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| | | 技法と進め方 || 脱フュージョン、アクセプタンス、現在への気づき、価値明確化、コミットメント。 || 初期静養→軽作業→重作業→生活訓練の段階的アプローチ。 | ||
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| | | 認知への態度 || 思考と距離をとる「脱フュージョン」(思考は真実ではない)。 || 思考や感情の操作を行わず、自然の経過に任せる。 | ||
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| | | 主な対象 || うつ病、不安症、PTSD、依存症、慢性疼痛など幅広い。 || 神経症(強迫性障害、対人恐怖、不安神経症)を中心。 | ||
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=== | === ACTの具体的実践例 === | ||
* '''脱フュージョン''': 「私はダメだ」という思考を「私は『私がダメだ』と思っている」と言い換える練習。 | |||
* '''アクセプタンス''': 痛みや不安を感じながらも、それを抱えて呼吸し続けるマインドフルネス呼吸法。 | |||
* '''価値明確化''': 自分が人生で大切にしたい価値(例:誠実さ、家族、学び)をリストアップ。 | |||
* '''コミットメント''': 価値に沿った行動目標を設定し、実行に移す(例:「週1回、誰かに感謝を伝える」)。 | |||
=== 森田療法の具体的実践例 === | |||
* '''初期静養''': 何もせず、横になって過ごす(2~4日)。症状の回復を目的にせず、自然経過に任せる。 | |||
* '''作業療法''': 雑巾がけや庭仕事など単純作業を通じて、注意を症状から外へ移す。 | |||
* '''日記療法''': 毎日の気づきや感情を記録し、観察者の視点を養う。 | |||
* '''目的本位の行動''': 症状に関係なく、目的(学校に行く、働く)に従って行動する。 | |||
=== 共通する哲学的背景 === | |||
* 苦しみを人生から排除しようとするのではなく、「苦しみは人間に本来的に備わっているもの」として共存していく。 | |||
* コントロール志向(「不安をなくしたい」「症状を消したい」)が苦しみを悪化させる。 | |||
* 「いま・ここ」に集中し、価値に沿った生き方をすることで、人生の充実を回復する。 | |||
=== 関連文献 === | |||
* スティーヴン・C・ヘイズ著『ACTをはじめよう』(星和書店) | |||
* 岡本浩一著『あるがままに生きる 森田療法入門』(ちくま新書) | |||
* 中井久夫監修『森田療法のすすめ』(講談社) | |||
2025年7月21日 (月) 20:13時点における最新版
ACTと森田療法の詳細比較と実践例
概要
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)と森田療法は、いずれも「感情を否定せず、受け入れながら、価値に沿った行動を取る」という点で共通した哲学を持つ心理療法である。しかし、背景や技法には文化的・理論的な違いがある。
共通点
| 共通点 | 説明 | 実践例 |
|---|---|---|
| 感情や症状を排除しない | 不安や悲しみを否定せず、「あるもの」として受け入れる姿勢。 | 不安があっても、「このままでいい」として静かに見守る。 |
| コントロール不能なものを手放す | 感情や症状をコントロールしようとすると逆に強まるため、操作しようとしない。 | 「不安をなくそうとしない」=「不安を持ったまま買い物に行く」など。 |
| 行動に焦点を当てる | 感情に振り回されず、価値や目的に沿った行動を優先。 | 「怖いけど、人前で話す」など。 |
| 価値・目的に生きる | 本人が大切にしている人生の方向性に基づく行動を推奨。 | 「自分は人とつながることを大切にしている」→「孤独でも会話を始める」など。 |
相違点
| 観点 | ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー) | 森田療法 |
|---|---|---|
| 理論的背景 | 第3世代の認知行動療法。関係フレーム理論(RFT)やマインドフルネスの影響。 | 東洋思想(禅・儒教・自然観)と日本的経験主義に基づく。 |
| 治療の枠組み | セッション形式(個別・集団・オンライン)。短期・長期両対応。 | 従来は入院療法、現在は外来・生活療法としての応用が中心。 |
| 技法と進め方 | 脱フュージョン、アクセプタンス、現在への気づき、価値明確化、コミットメント。 | 初期静養→軽作業→重作業→生活訓練の段階的アプローチ。 |
| 認知への態度 | 思考と距離をとる「脱フュージョン」(思考は真実ではない)。 | 思考や感情の操作を行わず、自然の経過に任せる。 |
| 主な対象 | うつ病、不安症、PTSD、依存症、慢性疼痛など幅広い。 | 神経症(強迫性障害、対人恐怖、不安神経症)を中心。 |
ACTの具体的実践例
- 脱フュージョン: 「私はダメだ」という思考を「私は『私がダメだ』と思っている」と言い換える練習。
- アクセプタンス: 痛みや不安を感じながらも、それを抱えて呼吸し続けるマインドフルネス呼吸法。
- 価値明確化: 自分が人生で大切にしたい価値(例:誠実さ、家族、学び)をリストアップ。
- コミットメント: 価値に沿った行動目標を設定し、実行に移す(例:「週1回、誰かに感謝を伝える」)。
森田療法の具体的実践例
- 初期静養: 何もせず、横になって過ごす(2~4日)。症状の回復を目的にせず、自然経過に任せる。
- 作業療法: 雑巾がけや庭仕事など単純作業を通じて、注意を症状から外へ移す。
- 日記療法: 毎日の気づきや感情を記録し、観察者の視点を養う。
- 目的本位の行動: 症状に関係なく、目的(学校に行く、働く)に従って行動する。
共通する哲学的背景
- 苦しみを人生から排除しようとするのではなく、「苦しみは人間に本来的に備わっているもの」として共存していく。
- コントロール志向(「不安をなくしたい」「症状を消したい」)が苦しみを悪化させる。
- 「いま・ここ」に集中し、価値に沿った生き方をすることで、人生の充実を回復する。
関連文献
- スティーヴン・C・ヘイズ著『ACTをはじめよう』(星和書店)
- 岡本浩一著『あるがままに生きる 森田療法入門』(ちくま新書)
- 中井久夫監修『森田療法のすすめ』(講談社)