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== | == 政略論 == | ||
<pre> | |||
国家にとって、法律をつくっておきながらその法律を守らないことほど有害な | |||
ことはない。 | |||
とくに法律を作った当の人々がそれを守らない場合は、文句なく最悪だ。 | |||
国家にとってもう一つ有害なことは、さまざまな人物を次々と糾弾し攻撃す | |||
ることによって、国民の間にとげとげしい雰囲気をかもしれだすことである。 | |||
国家にとって、また指導者個人にとっても有害なことは、絶え間ない弾圧 | |||
によって、人々の心を恐怖と疑惑におとしこむことだ。 | |||
これは、有害を越えて、危険である。 | |||
なぜなら、人間とは、絶望的な恐怖に襲われるや、それから身を守ろうと | |||
する想いだけで、凶暴で無思慮な反撃に転ずるものである。 | |||
だからこそ、市民たちを、いたずらに刑罰や弾圧で抑えつけるような愚は、 | |||
犯してはならない。 | |||
そうしておいて、人々が安心して生活できるような環境を整え、彼らの | |||
心が、自分たちの仕事にのみそそがれるようにすべきである。 | |||
『マキアヴェッリ 政略論』 | |||
われわれが常に心しておかねばならないことは、どうすればより実害が少なく | |||
てすむか、ということである。 | |||
そして、とりうる方策のうち、より害の少ない方策を選んで実行すべきなのだ。 | |||
なぜなら、この世の中に、完全無欠なことなど一つとしてありえないからである。 | |||
『マキアヴェッリ 政略論』 | |||
</pre> | |||
== マキアヴェッリ語録 == | |||
<pre> | |||
わたしがここに書く目的が、このようなことに関心をもち理解したいと思う | |||
人にとって実際に役立つものを書くことにある以上、想像の世界のことより | |||
も現実に存在する事柄を論ずるほうが、断じて有益であると信じる。 | |||
古今東西多くの賢人たちは、想像の世界にしか存在しえないような共和国や | |||
君主国を論じてきた。しかし人間にとって、いかに生きるべきかということ | |||
と、実際はどう生きているかということは大変にかけはなれているのである。 | |||
だからこそ人間いかに生きるべきか、ばかりを論じて現実の人間の生き様を | |||
直視しようとしない者は、現に所有するものを保持するどころか、すべてを | |||
失い破滅に向かうしかなくなるのだ。 | |||
なぜなら、なにごとにつけても善を行おうとしか考えない者は、悪しきもの | |||
の間にあって、破滅せざろうえない場合が多いからである。 | |||
それゆえに、自分の身を保とうと思う君主(指導者)は、悪しき者であることを | |||
学ぶべきであり、しかもそれを必要に応じて使ったり、使わなかったりする | |||
技術も、会得すべきなのである。 | |||
『マキアヴェッリ 君主論』 | |||
君主にとっては、愛されるのと恐れられるのとどちらが望ましいであろうか。 | |||
当然のことながら、ほとんどすべての君主は、両方ともを兼ね備えているのが | |||
望ましい、と答えるにちがいない。しかし、それを現実の世界で行使していく | |||
のは実にむずかしい。できないわけではないが、たぐいまれな力量の持ち主で | |||
あることが要求される。 | |||
それで、ほとんどの場合一方を選ぶしかないとなるのだが、わたしは、愛 | |||
されるよりも怖れられるほうが、君主にとって安全な選択であると言いたい。 | |||
なぜなら、人間には、怖れている者よりも愛している者の方を、容赦なく | |||
傷つけるという性向があるからだ。 | |||
人間というものは、恩義の絆で結ばれている愛情などは、利害がからむとなれば | |||
平然と断ち切ってしまうものである。一方、恐怖でつながれている場合は、 | |||
復讐が恐ろしく、容易には断ち切れないものなのだ。 | |||
それにしても、君主たる者、たとえ愛される君主像は捨てざろうえないとしても | |||
、憎みや憎悪だけは避けねばならない。それでいて、怖れられるよう努めねば | |||
ならない。怖れれることと憎しみを買わないことは、立派に両立しうること | |||
である。要するに、家臣のもちものに手を出すような無法は、しなければ | |||
よいからだ。人は、自分のもちものが奪われたときよりも、父親が死んだことの | |||
ほうを、早く忘れるものである。 | |||
『マキアヴェッリ 君主論』 | |||
== | |||
国家にとって、法律をつくっておきながらその法律を守らないことほど有害な | |||
ことはない。 | |||
とくに法律を作った当の人々がそれを守らない場合は、文句なく最悪だ。 | |||
国家にとってもう一つ有害なことは、さまざまな人物を次々と糾弾し攻撃す | |||
ることによって、国民の間にとげとげしい雰囲気をかもしれだすことである。 | |||
国家にとって、また指導者個人にとっても有害なことは、絶え間ない弾圧 | |||
によって、人々の心を恐怖と疑惑におとしこむことだ。 | |||
これは、有害を越えて、危険である。 | |||
なぜなら、人間とは、絶望的な恐怖に襲われるや、それから身を守ろうと | |||
する想いだけで、凶暴で無思慮な反撃に転ずるものである。 | |||
だからこそ、市民たちを、いたずらに刑罰や弾圧で抑えつけるような愚は、 | |||
犯してはならない。 | |||
そうしておいて、人々が安心して生活できるような環境を整え、彼らの | |||
心が、自分たちの仕事にのみそそがれるようにすべきである。 | |||
『マキアヴェッリ 政略論』 | |||
われわれが常に心しておかねばならないことは、どうすればより実害が少なく | |||
てすむか、ということである。 | |||
そして、とりうる方策のうち、より害の少ない方策を選んで実行すべきなのだ。 | |||
なぜなら、この世の中に、完全無欠なことなど一つとしてありえないからである。 | |||
『マキアヴェッリ 政略論』 | |||
運命は、変化するものである。それゆえ人間は、自分流のやり方をつづけて | |||
も時勢に合っている間はうまくいくが、時代の流れにそわなくなれば失敗 | |||
するしかない、ということである。 | |||
わたしは、はっきりと言う。 | |||
慎重であるよりは、果敢であるほうがよいと、断言する。 | |||
なぜなら、運命の神は女神なのだから、彼女に対して主導権を得ようと思う | |||
なら、乱暴にあつかうことが必要なのだ。 | |||
運命は、冷たいほど冷静に対してくる者よりも、征服したいという欲望を | |||
あらわにしてくる者の方に、なびくようである。 | |||
要するに、運命は女に似て若者の友である。若者は、思慮に富んでいない | |||
がために後々のことなど考えず、より激しく、より大胆に、女を支配する | |||
からである。 | |||
『マキアヴェッリ 君主論』 | |||
衆に優れた人物は、運に恵まれようと見離されようと、常に態度を変えない | |||
ものである。 | |||
『マキアヴェッリ 政略論』 | |||
</pre> | |||
== 関連項目 == | |||
* [[読書 一覧]] | |||
* [[NHK 100分de名著 マキャベリ 君主論]] | |||
== 第一回自立した人間として生きよ == | |||
* 異色の書であり、禁書であった | |||
* 近代政治学の祖 | |||
* 16世紀初頭、外交官がそのときのリーダに向けて書いたもの | |||
* 君主になるための実践、思想 | |||
* わが魂よりも、わが祖国を愛します | |||
=== 書かれている内容 === | |||
# 九人の分類とその制服、維持の手段 | |||
# 攻撃と防衛に関する軍事的側面 | |||
# 君主の資質 | |||
# 君主を待ち受ける運命論 | |||
=== 今までの君主論との比較 === | |||
* (今までの君主論)正義と慈愛 | |||
* (マキャベリの君主論)君主は時に冷酷であれ | |||
=== 時代背景 === | |||
* リーダ不在の時代、時代の大転換期 | |||
* 29歳から、15年間、外交官として国につかえ、君主論を執筆 | |||
* 現実主義者、マキャベリ | |||
=== 君主論15章 === | |||
<pre> | |||
人が現実に生きるのと | |||
人間いかに生きるべきかというのは | |||
はなはだかけ離れている | |||
だから人間いかに | |||
生きるべきかを見て | |||
現に人が生きている現実の姿を | |||
見逃す人間は | |||
自立するどころか | |||
破滅を思い知らされるのが | |||
落ちである | |||
</pre> | |||
* 現実をみつめ、分析し、知恵を得る | |||
=== 君主論14章 === | |||
<pre> | |||
君主は | |||
歴史書に親しみ | |||
読書をとおして | |||
英傑のしとげた行いを | |||
考察することが肝心である | |||
</pre> | |||
* 歴史は繰り返す、いつの世も変わらない | |||
* 歴史書から、古代の人たちの知恵を学ぶ | |||
=== 君主に必要なもの === | |||
* 力量(資質、器量) | |||
* 運命 | |||
=== 君主論25章 === | |||
<pre> | |||
全面的に運命に | |||
依存してしまう君主は | |||
運命が変われば滅びるということ | |||
また時勢とともに | |||
自分のやり方を一致した人は成功し | |||
逆に時代と自分の生き方が | |||
かみ合ない者は | |||
不幸になるということ | |||
</pre> | |||
* 猛威をふるう川でもせきや堤を作り、あらかじめ備えをしておくことができる | |||
* 時流を読んで自らを変えていゆく | |||
=== 運命とのつきあい方 === | |||
<pre> | |||
人は慎重であるよりは | |||
むしろ果断に進むほうがよい | |||
なぜなら運命は女神だから | |||
彼女を征服しようとすれば | |||
打ちのめし突き飛ばす | |||
必要がある | |||
君主論25章 | |||
</pre> | |||
* 運命は自分の力で変えてゆく | |||
== 第二回リーダの条件とは == | |||
* 思想と実践の書 | |||
* 祖国に対する熱い思い | |||
* 理想の君主:チェーザレ・ボルジア | |||
: 勇猛果敢である | |||
: 非情に冷酷な策略家 | |||
* 優しいというのは優柔不断 | |||
* 君主に必要な素質 | |||
: 冷酷さ(必然性のある冷酷さ) | |||
: 恐れられること。君主には決断力が必要(ぶれない態度、噂は気にするな) | |||
: 気前の良さとケチ(金銭感覚がシビア) | |||
: 君主はライオン(力)とキツネ(知恵)が必要 | |||
* 人々の愛は移り変わりやすい | |||
* 君主はいい人であるとみせかけることが必要 | |||
* 君主は結果が命 | |||
== 第三回 人間関係の極意 == | |||
* 人間の本質を記した君主論は普遍的な書物 | |||
=== 人の心をつかむ === | |||
* 部下の心をつかむ為には? | |||
: 部下が現状の変化を恐れるようにしむける | |||
<pre> | |||
身にあまる栄誉を与えて | |||
もうそれ以上の | |||
名誉を望まないようにすること | |||
望外(ぼうがい)の財産を与えて | |||
それ以上の富を望まないように | |||
過ぎた職責を与えて | |||
変革を怖がるようにしむけること | |||
君主論 22章 | |||
</pre> | |||
* 優秀な上司を見極める為には? | |||
<pre> | |||
ある君主の頭脳のよしあしを | |||
推測するには | |||
まず最初に | |||
君主の側近をみればいい | |||
側近が有能で誠実であれば | |||
その君主は聡明だと | |||
評価してまちがいない | |||
君主論 22章 | |||
</pre> | |||
: 類は友を呼ぶ | |||
: 人を見るには、その人の周りのいる人を見ればいい | |||
=== 中立を選んだ場合は、両方から敵として見られてしまう === | |||
* はっきりした態度を示す事が人々の尊敬を集める | |||
<pre> | |||
決断力のない君主は | |||
当面の危機を | |||
回避しようとするあまり | |||
多くの場合 | |||
中立の道を選ぶ | |||
そして | |||
おおかたの君主が | |||
滅んでいく | |||
君主論 21章 | |||
</pre> | |||
* 君主としてしてはいけないことは、軽蔑されることである | |||
: 態度をはっきりさせないと、軽蔑されることになる | |||
=== 君主が軽蔑される原因 === | |||
* 気が変わりやすい | |||
* 軽薄 | |||
* 臆病 | |||
* 決断力がない | |||
=== マキャベリ流人心掌握術 === | |||
* 新君主として最初にやるべき事とは? | |||
: 住民たちの法律や税制に手をつけない | |||
: (相手の文化やルールを尊重する) | |||
* 安定を維持する為には | |||
: 君主は恩恵を与える役はすすんで引き受け、憎まれ役は他人に請け負わせればいい | |||
: (第三者の機関を作ればいい) | |||
: (人々の恨みや憎しみは避ける) | |||
* 加害行為は一気にやってしまわなくてはいけない | |||
* 恩恵はよりよく人に味わってもらうように小出しにやらなくてはいけない | |||
: (味をしめられては困る) | |||
* 祭りや催し物の開催 | |||
: (人々を熱中させ心をつかむ) | |||
* 褒賞の用意 | |||
: (ふだんからきちんと部下を見つめきちんと評価する) | |||
* 各部署との交流 | |||
: (自らの威厳を多くに知らしめる) | |||
=== 君主が注意すべきこと === | |||
* へつらう者(お世辞を言う人、追従者)は、ペストのようなもの | |||
* 国内の賢人を選んで、相談相手にする | |||
<pre> | |||
よい意見は | |||
君主の思慮から | |||
生まれるものでなければならない | |||
よい助言から | |||
君主の思慮が | |||
生まれてはならない | |||
君主論 23章 | |||
</pre> | |||
== 第四回 賢い交渉のツボ == | |||
<pre> | |||
「時の恵みを静かに待つ」のを嫌い | |||
彼ら自身の力量と思慮に賭け | |||
その恵みに浴することを願った | |||
君主論 3章 | |||
</pre> | |||
* 交渉時はチャンスだと思ったら即座に行動する | |||
=== マキャベリの交渉のコツ === | |||
* 情報を集めることが第一 | |||
* スパイを使って情報を集める事があった | |||
<pre> | |||
情報を入手する最善の方法は | |||
情報を与える事だ | |||
ラファエッロ・ジローラミに与える書 | |||
</pre> | |||
* 人から得た情報を取捨選択する | |||
* 人間としての信頼関係を作る | |||
* 信頼関係があるからこそ、情報のやりとりができる | |||
* 「51対49」の精神(東郷茂徳元外相) | |||
: 交渉の時は、相手国に51を譲り、自国は49という気持ちで臨む | |||
: 相手の国の必要としている事を本国に知らせる | |||
=== マキャベリの運命論 === | |||
<pre> | |||
われわれ人間の自由意志は | |||
奪われてはならないもので | |||
かりに運命が人間活動の半分を | |||
思いのままに裁定(さいてい)しえたとしても | |||
少なくともあとの半分か | |||
半分近くは | |||
運命がわれわれの支配に | |||
任せてくれている | |||
とみるのが本当だと | |||
わたしは考えている | |||
君主論 25章 | |||
</pre> | |||
* 運命は自分の力で変えられる | |||
* 責任がある 裁量の余地があった 自由があった | |||
* 機会の窓が開いたときに 動くか 動かないかは人間の自由 責任 | |||
== 関連項目 == | |||
* [[NHK 一覧]] | |||
* [[読書 マキアヴェッリ]] | |||
[[Category:NHK]] | |||
[[Category:TV]] | |||
[[Category:NHK 100分de名著]] |
2024年9月19日 (木) 15:24時点における最新版
政略論
国家にとって、法律をつくっておきながらその法律を守らないことほど有害な ことはない。 とくに法律を作った当の人々がそれを守らない場合は、文句なく最悪だ。 国家にとってもう一つ有害なことは、さまざまな人物を次々と糾弾し攻撃す ることによって、国民の間にとげとげしい雰囲気をかもしれだすことである。 国家にとって、また指導者個人にとっても有害なことは、絶え間ない弾圧 によって、人々の心を恐怖と疑惑におとしこむことだ。 これは、有害を越えて、危険である。 なぜなら、人間とは、絶望的な恐怖に襲われるや、それから身を守ろうと する想いだけで、凶暴で無思慮な反撃に転ずるものである。 だからこそ、市民たちを、いたずらに刑罰や弾圧で抑えつけるような愚は、 犯してはならない。 そうしておいて、人々が安心して生活できるような環境を整え、彼らの 心が、自分たちの仕事にのみそそがれるようにすべきである。 『マキアヴェッリ 政略論』 われわれが常に心しておかねばならないことは、どうすればより実害が少なく てすむか、ということである。 そして、とりうる方策のうち、より害の少ない方策を選んで実行すべきなのだ。 なぜなら、この世の中に、完全無欠なことなど一つとしてありえないからである。 『マキアヴェッリ 政略論』
マキアヴェッリ語録
わたしがここに書く目的が、このようなことに関心をもち理解したいと思う 人にとって実際に役立つものを書くことにある以上、想像の世界のことより も現実に存在する事柄を論ずるほうが、断じて有益であると信じる。 古今東西多くの賢人たちは、想像の世界にしか存在しえないような共和国や 君主国を論じてきた。しかし人間にとって、いかに生きるべきかということ と、実際はどう生きているかということは大変にかけはなれているのである。 だからこそ人間いかに生きるべきか、ばかりを論じて現実の人間の生き様を 直視しようとしない者は、現に所有するものを保持するどころか、すべてを 失い破滅に向かうしかなくなるのだ。 なぜなら、なにごとにつけても善を行おうとしか考えない者は、悪しきもの の間にあって、破滅せざろうえない場合が多いからである。 それゆえに、自分の身を保とうと思う君主(指導者)は、悪しき者であることを 学ぶべきであり、しかもそれを必要に応じて使ったり、使わなかったりする 技術も、会得すべきなのである。 『マキアヴェッリ 君主論』 君主にとっては、愛されるのと恐れられるのとどちらが望ましいであろうか。 当然のことながら、ほとんどすべての君主は、両方ともを兼ね備えているのが 望ましい、と答えるにちがいない。しかし、それを現実の世界で行使していく のは実にむずかしい。できないわけではないが、たぐいまれな力量の持ち主で あることが要求される。 それで、ほとんどの場合一方を選ぶしかないとなるのだが、わたしは、愛 されるよりも怖れられるほうが、君主にとって安全な選択であると言いたい。 なぜなら、人間には、怖れている者よりも愛している者の方を、容赦なく 傷つけるという性向があるからだ。 人間というものは、恩義の絆で結ばれている愛情などは、利害がからむとなれば 平然と断ち切ってしまうものである。一方、恐怖でつながれている場合は、 復讐が恐ろしく、容易には断ち切れないものなのだ。 それにしても、君主たる者、たとえ愛される君主像は捨てざろうえないとしても 、憎みや憎悪だけは避けねばならない。それでいて、怖れられるよう努めねば ならない。怖れれることと憎しみを買わないことは、立派に両立しうること である。要するに、家臣のもちものに手を出すような無法は、しなければ よいからだ。人は、自分のもちものが奪われたときよりも、父親が死んだことの ほうを、早く忘れるものである。 『マキアヴェッリ 君主論』 国家にとって、法律をつくっておきながらその法律を守らないことほど有害な ことはない。 とくに法律を作った当の人々がそれを守らない場合は、文句なく最悪だ。 国家にとってもう一つ有害なことは、さまざまな人物を次々と糾弾し攻撃す ることによって、国民の間にとげとげしい雰囲気をかもしれだすことである。 国家にとって、また指導者個人にとっても有害なことは、絶え間ない弾圧 によって、人々の心を恐怖と疑惑におとしこむことだ。 これは、有害を越えて、危険である。 なぜなら、人間とは、絶望的な恐怖に襲われるや、それから身を守ろうと する想いだけで、凶暴で無思慮な反撃に転ずるものである。 だからこそ、市民たちを、いたずらに刑罰や弾圧で抑えつけるような愚は、 犯してはならない。 そうしておいて、人々が安心して生活できるような環境を整え、彼らの 心が、自分たちの仕事にのみそそがれるようにすべきである。 『マキアヴェッリ 政略論』 われわれが常に心しておかねばならないことは、どうすればより実害が少なく てすむか、ということである。 そして、とりうる方策のうち、より害の少ない方策を選んで実行すべきなのだ。 なぜなら、この世の中に、完全無欠なことなど一つとしてありえないからである。 『マキアヴェッリ 政略論』 運命は、変化するものである。それゆえ人間は、自分流のやり方をつづけて も時勢に合っている間はうまくいくが、時代の流れにそわなくなれば失敗 するしかない、ということである。 わたしは、はっきりと言う。 慎重であるよりは、果敢であるほうがよいと、断言する。 なぜなら、運命の神は女神なのだから、彼女に対して主導権を得ようと思う なら、乱暴にあつかうことが必要なのだ。 運命は、冷たいほど冷静に対してくる者よりも、征服したいという欲望を あらわにしてくる者の方に、なびくようである。 要するに、運命は女に似て若者の友である。若者は、思慮に富んでいない がために後々のことなど考えず、より激しく、より大胆に、女を支配する からである。 『マキアヴェッリ 君主論』 衆に優れた人物は、運に恵まれようと見離されようと、常に態度を変えない ものである。 『マキアヴェッリ 政略論』
関連項目
第一回自立した人間として生きよ
- 異色の書であり、禁書であった
- 近代政治学の祖
- 16世紀初頭、外交官がそのときのリーダに向けて書いたもの
- 君主になるための実践、思想
- わが魂よりも、わが祖国を愛します
書かれている内容
- 九人の分類とその制服、維持の手段
- 攻撃と防衛に関する軍事的側面
- 君主の資質
- 君主を待ち受ける運命論
今までの君主論との比較
- (今までの君主論)正義と慈愛
- (マキャベリの君主論)君主は時に冷酷であれ
時代背景
- リーダ不在の時代、時代の大転換期
- 29歳から、15年間、外交官として国につかえ、君主論を執筆
- 現実主義者、マキャベリ
君主論15章
人が現実に生きるのと 人間いかに生きるべきかというのは はなはだかけ離れている だから人間いかに 生きるべきかを見て 現に人が生きている現実の姿を 見逃す人間は 自立するどころか 破滅を思い知らされるのが 落ちである
- 現実をみつめ、分析し、知恵を得る
君主論14章
君主は 歴史書に親しみ 読書をとおして 英傑のしとげた行いを 考察することが肝心である
- 歴史は繰り返す、いつの世も変わらない
- 歴史書から、古代の人たちの知恵を学ぶ
君主に必要なもの
- 力量(資質、器量)
- 運命
君主論25章
全面的に運命に 依存してしまう君主は 運命が変われば滅びるということ また時勢とともに 自分のやり方を一致した人は成功し 逆に時代と自分の生き方が かみ合ない者は 不幸になるということ
- 猛威をふるう川でもせきや堤を作り、あらかじめ備えをしておくことができる
- 時流を読んで自らを変えていゆく
運命とのつきあい方
人は慎重であるよりは むしろ果断に進むほうがよい なぜなら運命は女神だから 彼女を征服しようとすれば 打ちのめし突き飛ばす 必要がある 君主論25章
- 運命は自分の力で変えてゆく
第二回リーダの条件とは
- 思想と実践の書
- 祖国に対する熱い思い
- 理想の君主:チェーザレ・ボルジア
- 勇猛果敢である
- 非情に冷酷な策略家
- 優しいというのは優柔不断
- 君主に必要な素質
- 冷酷さ(必然性のある冷酷さ)
- 恐れられること。君主には決断力が必要(ぶれない態度、噂は気にするな)
- 気前の良さとケチ(金銭感覚がシビア)
- 君主はライオン(力)とキツネ(知恵)が必要
- 人々の愛は移り変わりやすい
- 君主はいい人であるとみせかけることが必要
- 君主は結果が命
第三回 人間関係の極意
- 人間の本質を記した君主論は普遍的な書物
人の心をつかむ
- 部下の心をつかむ為には?
- 部下が現状の変化を恐れるようにしむける
身にあまる栄誉を与えて もうそれ以上の 名誉を望まないようにすること 望外(ぼうがい)の財産を与えて それ以上の富を望まないように 過ぎた職責を与えて 変革を怖がるようにしむけること 君主論 22章
- 優秀な上司を見極める為には?
ある君主の頭脳のよしあしを 推測するには まず最初に 君主の側近をみればいい 側近が有能で誠実であれば その君主は聡明だと 評価してまちがいない 君主論 22章
- 類は友を呼ぶ
- 人を見るには、その人の周りのいる人を見ればいい
中立を選んだ場合は、両方から敵として見られてしまう
- はっきりした態度を示す事が人々の尊敬を集める
決断力のない君主は 当面の危機を 回避しようとするあまり 多くの場合 中立の道を選ぶ そして おおかたの君主が 滅んでいく 君主論 21章
- 君主としてしてはいけないことは、軽蔑されることである
- 態度をはっきりさせないと、軽蔑されることになる
君主が軽蔑される原因
- 気が変わりやすい
- 軽薄
- 臆病
- 決断力がない
マキャベリ流人心掌握術
- 新君主として最初にやるべき事とは?
- 住民たちの法律や税制に手をつけない
- (相手の文化やルールを尊重する)
- 安定を維持する為には
- 君主は恩恵を与える役はすすんで引き受け、憎まれ役は他人に請け負わせればいい
- (第三者の機関を作ればいい)
- (人々の恨みや憎しみは避ける)
- 加害行為は一気にやってしまわなくてはいけない
- 恩恵はよりよく人に味わってもらうように小出しにやらなくてはいけない
- (味をしめられては困る)
- 祭りや催し物の開催
- (人々を熱中させ心をつかむ)
- 褒賞の用意
- (ふだんからきちんと部下を見つめきちんと評価する)
- 各部署との交流
- (自らの威厳を多くに知らしめる)
君主が注意すべきこと
- へつらう者(お世辞を言う人、追従者)は、ペストのようなもの
- 国内の賢人を選んで、相談相手にする
よい意見は 君主の思慮から 生まれるものでなければならない よい助言から 君主の思慮が 生まれてはならない 君主論 23章
第四回 賢い交渉のツボ
「時の恵みを静かに待つ」のを嫌い 彼ら自身の力量と思慮に賭け その恵みに浴することを願った 君主論 3章
- 交渉時はチャンスだと思ったら即座に行動する
マキャベリの交渉のコツ
- 情報を集めることが第一
- スパイを使って情報を集める事があった
情報を入手する最善の方法は 情報を与える事だ ラファエッロ・ジローラミに与える書
- 人から得た情報を取捨選択する
- 人間としての信頼関係を作る
- 信頼関係があるからこそ、情報のやりとりができる
- 「51対49」の精神(東郷茂徳元外相)
- 交渉の時は、相手国に51を譲り、自国は49という気持ちで臨む
- 相手の国の必要としている事を本国に知らせる
マキャベリの運命論
われわれ人間の自由意志は 奪われてはならないもので かりに運命が人間活動の半分を 思いのままに裁定(さいてい)しえたとしても 少なくともあとの半分か 半分近くは 運命がわれわれの支配に 任せてくれている とみるのが本当だと わたしは考えている 君主論 25章
- 運命は自分の力で変えられる
- 責任がある 裁量の余地があった 自由があった
- 機会の窓が開いたときに 動くか 動かないかは人間の自由 責任